2010年02月09日
日本に生まれるということ
それは、すなわち
世界行きのチケットを手に入れるということ。
これ、友達の受け売りです。
先日、ベトナム人の友達Phoungちゃんのお別れ会に行ってきました。
なんでも、家族みんなでアメリカはオハイオに行くのだとか。
つまりは、お堅い言葉でいえば「越僑」。
ベトナム戦争の影響で、戦後、多くの「南」の人たちは海を渡り、
対戦国であったアメリカをはじめ、国外へと希望を求めた。
中には命を懸けて「ボートピープル」という形で国外脱出を試みる者もいた。
その数は何十万にものぼった。
現在、「越僑」のその数は300万人にも及ぶ。
ベトナムの人口が約8312万人だから、人口比では3.6%程度になる。(2006年調べ)
「越僑」は世界各地に散らばって活躍しているが、
地理的な分布をみると、その多くは米国に居住していることがわかる。
米国に居住する「越僑」は約122.4万人で越僑全体の3分の1以上を占めている。
ベトナムにおける「越僑」の貢献は計り知れない。
越僑による国内への送金額は、ODA総額を上回るという。
ベトナムの正月である「テト(旧正月)」が近づいた今日この頃、
ベトナムに帰省した越僑の方の姿をよく見かける。
この前も、カフェで隣りになった人は、ベトナム人だけれども英語しか喋っていなかった。
なんか不思議な感じがした。
この「越僑」、もちろんそんな簡単に成せるものではない。
ベトナムでは、一般の人には国外移住は認められていないらしい。
Phoungちゃんの場合は、祖父が元軍事関係者で今回行けるようになったとか。
それでもPhoungちゃん自身は、望んだものではなかった。
「私は行きたくない」
いつもおちゃらけている彼女の何気ない言葉の裏に、事の大きさを感じた。
漫画やアニメをこよなく愛す親日家の彼女はかねてから日本行きを切望していた。
しかし、ベトナム人が海外に住むということは並大抵のことではない。
「どこにでも行けるアメリカ国籍のパスポートを持って、いつか日本へ行ってみたい」
海外移住には金銭的なことはもちろんだが、
入国審査やビザの発給など多くのハードルが待ち構えている。
ベトナムに限ったことではない。
日本に生まれた私たちにとって、海外で生活することは
国民に与えられた一つの選択肢になっているが、
実際にはそうでない国がほとんどだ。
友達が言ってた「世界行きチケット」の意味が何となく分かった気がした。
国籍のみならず、「日本人」という“ブランド”は全世界で高い信頼を勝ち得ているのだ。
当たり前だと思っていたことは、外から見てみると当たり前ではない。
こっちに来て初めて聞いた「越僑」とか「華僑」という言葉。
こうした言葉が“日本”という国を見直す視点を与えてくれそうだ。
何はともあれ、友の旅立ちに幸あれ。
いつの日かPhoungちゃんに日本を案内してあげよう。